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彼岸花と曼珠沙華・リコリスの違い【別名一覧】

秋の田んぼの畦道を、燃えるように赤く染める花。彼岸花、曼珠沙華、リコリス。この3つの名前を聞いて、「どれも同じ花のこと?」と首をかしげた経験はありませんか。

同じ花に、なぜこれほど名前があるのか。しかも別名は1000を超えるとも言われます。死人花のような不穏な呼び名がある一方で、仏教では天上の花として尊ばれてもいます。

この不思議は、名前を「3つの軸」で整理すると一気にほどけていきます。この記事では、3つの名前の関係から、由来ごとに分けた別名一覧、そして呼び名が増えた背景まで、順番に解き明かしていきます。

目次

曼珠沙華・彼岸花・リコリスの違い|一目でわかる比較表

呼び名の話をしていると、もうひとつ気になる言葉が出てきます。園芸店で見かける「リコリス」です。これも同じ花なのか、それとも別物なのか。ここでいったん、三つの呼び名の関係を整理しておきましょう。

結論から言えば、三つの言葉が指す範囲は少しずつ違います。同じ円の中に収まる場合もあれば、はみ出す部分もあるという関係です。

三つの呼び名の関係

それぞれの言葉が持つ意味の範囲を比べてみます。

下の表は、3つの名前の違いを対比したものです。会話や文章で使い分ける際の参考にしてください。

呼び名位置づけ主に使われる場面ニュアンス
彼岸花(ヒガンバナ)正式な和名日常会話・植物学・図鑑身近で季節感がある
曼珠沙華仏教由来の別名仏典・和歌・文学・楽曲神聖で幻想的
リコリス学名・属名園芸・海外・品種名華やかで園芸的

こうして並べると、3つは「別の花」ではなく「同じ花の別の顔」だとわかります。

彼岸花はリコリス属の一種であり、その別名が曼珠沙華、という関係です。名前が変わるだけで、指している赤い花は同じなのです。

リコリスは、ヒガンバナ属を表す学名 Lycoris から来ています。つまり、彼岸花もリコリスの一種。ただし園芸の世界でリコリスと言うときは、ピンクやクリーム色といった園芸品種を指すことが多く、野に咲く赤い彼岸花とは少しニュアンスが違ってきます。

シーン別・自然な使い分け

どの言葉を選ぶかで、文章や会話の印象が変わります。場面ごとの使い分けをまとめました。

場面ふさわしい呼び名理由
俳句・短歌・文学曼珠沙華音の響きと物語性が生きます
図鑑・報道・学術彼岸花(ヒガンバナ)標準和名として通用します
仏事・お墓参りの話題彼岸花季節と行事が自然に結びつきます
園芸店・球根の購入リコリス園芸品種を含む名称として一般的
観光地の名称曼珠沙華公園名などで採用例が多く見られます

観光地の名前に曼珠沙華が選ばれやすいのは、この言葉が持つ華やかさと非日常感のためでしょう。「曼珠沙華公園」と聞くと、それだけで特別な場所のように感じられます。

こうした呼び名の背景や、花の生態をより深く知りたくなったら、植物図鑑や彼岸花を題材にした写真集を手元に置いてみるのもおすすめです。名前の由来まで解説された図鑑を眺めていると、散歩で出会う花の見え方が変わってきます。季節が巡るたびに読み返したくなる、そんな一冊に出会えるかもしれません。


違いは「3つの軸」で整理できる

「彼岸花と曼珠沙華、リコリスの違いは?」という問いに、一言で答えるのは実は難しいところです。3つは同じ花を指すこともあれば、少し違うものを指すこともあるからです。

この矛盾のような関係は、名前が使われる「場面」で分けると見えてきます。日常、仏教・文学、園芸・海外という3つの軸です。

同じ花なのに名前が3つ?関係をざっくり整理

まずは全体像をつかみましょう。3つの名前は、それぞれ立ち位置が違います。ここを押さえると、後の話が理解しやすくなります。

  • 彼岸花(ヒガンバナ):正式な日本語名(和名)
  • 曼珠沙華(まんじゅしゃげ):仏教に由来する別名・俗称
  • リコリス:学名であり、園芸や海外で使われる呼び名

3つとも、あの赤い花を指す点は共通です。ただし「リコリス」だけは少し事情が違い、もう少し広い意味を持ちます。詳しくは軸3で説明します。

「和名・仏教・園芸」という3つの軸で読み解く

同じ花が場面によって名前を変える、と考えると腑に落ちます。畦道で見かければ「彼岸花」、お経や詩の中では「曼珠沙華」、園芸店では「リコリス」という具合です。

つまり違いは、植物の種類ではなく「どの世界で呼ばれているか」にあります。次から、それぞれの軸を一つずつ見ていきましょう。3つの関係は、後半の比較表でも整理します。


和名「彼岸花」:日常と植物学の名前

まず基本となるのが「彼岸花(ヒガンバナ)」です。これは植物としての正式な日本語名、つまり和名にあたります。図鑑や日常会話で使われる、いちばん身近な呼び方です。

この名前には、咲く時期がそのまま表れています。由来を知ると、名前の親しみやすさが伝わってきます。

名前の由来は「お彼岸に咲く」から

彼岸花という名は、秋のお彼岸の頃に咲くことにちなんでいます。毎年、9月のお彼岸に合わせるように、真っ赤な花が一斉に開きます。

暦と花がぴたりと重なるため、季節の移ろいを告げる花として親しまれてきました。田んぼの畦や土手を赤く縁取る風景は、日本の秋の原風景の一つです。

「葉見ず花見ず」という独特の生態

彼岸花には、とても変わった特徴があります。花が咲くとき、葉が一枚もついていないのです。真っ直ぐな茎の先に、花だけが咲きます。

花が枯れたあとに葉が伸びてくるため、花と葉が同時に姿を見せません。この性質から「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」という別名も生まれました。名前が生態をそのまま言い表しています。


「曼珠沙華」:仏教と文学が育てた神聖な名前

次の軸が「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」です。同じ花を指しますが、こちらは宗教と文学の香りをまとった呼び名です。不吉なイメージとは対照的に、本来は神聖な意味を持っています。

この名前のルーツは、はるか昔のインドの言葉にさかのぼります。背景を知ると、印象がずいぶん変わります。

サンスクリット語と法華経の「天上の花」

曼珠沙華は、古代インドのサンスクリット語「manjusaka(マンジュシャカ)」に漢字を当てたものです。法華経などの仏典に登場する、天界に咲くとされる花に由来します。

仏典の中では、めでたいことが起こる前ぶれに天から降る、吉兆の花として描かれます。つまり本来の曼珠沙華は、不吉どころか喜ばしい花なのです。同じ花に、まるで逆の意味が重なっているわけです。

なぜ和歌や楽曲で使われるのか

「曼珠沙華」という響きには、独特の重みと美しさがあります。そのため、詩歌や小説、楽曲の題名などで好んで使われてきました。

日常語の「彼岸花」より、文学的で幻想的な印象を与えます。作品の中で妖しさや無常観を表現したいとき、この呼び名が選ばれる傾向があります。名前が持つ空気感が、使い分けを生んでいます。

「リコリス」:学名であり園芸・海外の名前

3つめの軸が「リコリス」です。ここが少しややこしく、多くの人が混乱する部分でもあります。リコリスは、彼岸花の学名であると同時に、もう少し広い意味を持つ言葉だからです。

順を追って整理すれば、難しくありません。まずは名前の由来から見ていきましょう。

学名はギリシャ神話の海の精霊から

彼岸花の学名は「リコリス・ラディアータ(Lycoris radiata)」です。この「リコリス(Lycoris)」は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属を指す属名になります。

名前の由来は、ギリシャ神話に登場する海の精霊リュコリアスにあるとされています。学問の世界で付けられた名前が、園芸を通じて広く使われるようになりました。

彼岸花は「リコリス属の一種」

ここが大切なポイントです。リコリスは、彼岸花だけを指す言葉ではありません。ヒガンバナ属という、いくつもの仲間を含むグループの名前です。

つまり、彼岸花はリコリスの一種です。「リコリス=彼岸花」とすべて言い切れるわけではありません。園芸の世界では、品種改良された色とりどりの仲間が「リコリス」として流通しています。

お菓子や薬草の「リコリス」は別物

もう一つ、混同しやすい落とし穴があります。「リコリス」という言葉は、まったく別の植物も指すのです。

お菓子や薬草で知られるリコリス(Licorice)は、マメ科のスペインカンゾウのことです。甘味料や漢方に使われる植物で、彼岸花とは科も性質もまるで違います。名前が似ているだけの別物なので、園芸の話題では注意しましょう。

リコリス属の色と種類

彼岸花といえば赤、という印象が強いはずです。ところがリコリス属には、赤以外の花を咲かせる仲間もいます。園芸店で見かける色とりどりの花は、この仲間たちです。

赤い彼岸花だけが「リコリス」ではない、という点がここでも効いてきます。代表的な色と種類を見ていきましょう。

リコリス属には、花色や咲く時期の異なる種類があります。それぞれに趣があり、園芸でも人気です。

花色主な種類特徴
ヒガンバナもっとも一般的な彼岸花
シロバナマンジュシャゲ赤との中間的な淡い色合い
ショウキズイセン鮮やかな黄色の大きな花
オレンジキツネノカミソリお盆頃に咲く、反り返りの少ない花

白い彼岸花は「シロバナマンジュシャゲ」と呼ばれ、群生地でも人気の被写体です。黄色い花を咲かせるショウキズイセンも、華やかで見応えがあります。赤一色ではない多彩さも、この花の魅力です。


彼岸花の別名【一覧】由来のタイプ別に整理

彼岸花は、別名の多さで群を抜く花です。その数は1000を超えるとも言われます。ただ、やみくもに並べても覚えられません。そこで、名前が生まれた「理由」でグループ分けすると、驚くほど整理されます。

別名は大きく、見た目・生態・毒・死のイメージという由来に分けられます。

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別名読み方由来のタイプ背景・使われる場面
曼珠沙華まんじゅしゃげ仏教・信仰天上の花。文学や楽曲で好まれる
葉見ず花見ずはみずはなみず生態花と葉が別々に出る性質から
天蓋花てんがいばな見た目仏具の天蓋に似た花形から
狐の松明きつねのたいまつ見た目燃えるような赤い姿から
毒花どくばな全草に毒を持つことから
死人花しびとばな死・不吉墓地に多く咲くことから
幽霊花ゆうれいばな死・不吉妖しく儚い印象から
相思華サンチョ生態韓国での呼び名。両思いの象徴

順に見ていきましょう。

見た目の姿から生まれた別名

まずは、花の姿かたちにちなんだ呼び名です。放射状に広がる花の形が、さまざまなものに見立てられました。

  • 天蓋花(てんがいばな):仏具の天蓋に似た形から
  • 狐花(きつねばな):妖しい雰囲気から
  • 狐の松明(きつねのたいまつ):燃えるような赤い姿から
  • 雷花(かみなりばな):花火のように弾ける形から

咲き方・生態から生まれた別名

次に、独特の生態にちなんだ呼び名です。花と葉が別々に現れる性質が、名前に反映されています。

  • 葉見ず花見ず:花のとき葉がなく、葉のとき花がないことから
  • 相思華(サンチョ):韓国での呼び名。花と葉が会えないことを想いに重ね、両思いの象徴とされます

毒があることから生まれた別名

彼岸花には毒があります。その性質が、警告のような別名を生みました。

  • 毒花(どくばな):毒を持つことから
  • 痺れ花(しびればな):毒の作用にちなんで

死や不吉のイメージから生まれた別名

墓地の近くに咲くことなどから、不穏な呼び名も数多くあります。これらが「怖い花」という印象のもとになっています。

  • 死人花(しびとばな)
  • 幽霊花(ゆうれいばな)
  • 地獄花(じごくばな)
  • 捨子花(すてごばな)

こうした主要な別名を、由来と使われ方まで含めて一覧にまとめました。名前の背景を知ると、印象がぐっと変わります。

なぜ地方名がこんなに多いのか:暮らしとの距離が生んだ呼び名

これほど別名が多い植物は、そう多くありません。その背景には、彼岸花と人の暮らしの近さがあります。名前の数は、花が生活のすぐそばにあった証拠です。

なぜ生活圏に多く咲いたのか。理由を知ると、地方名の多さに納得がいきます。

田の畦・墓地・土手という「生活圏のすぐそば」

彼岸花がよく咲くのは、田んぼの畦道、土手、そして墓地の周辺です。どれも人の暮らしのすぐ近くにある場所です。

毎日目にする花だからこそ、各地で親しまれ、その土地ならではの呼び名が生まれました。身近な存在だったからこそ、方言のように呼び名が枝分かれしていったのです。

毒でモグラを防ぐため、人が植えて運んだ

彼岸花が生活圏に多いのには、明確な理由があります。球根の毒が、モグラやネズミを寄せつけないのです。

そのため、農作物やあぜを守る目的で、人の手で畦や土手に植えられてきました。彼岸花は種をつけず球根で増えるため、人が球根を運ぶことで全国へ広がったと考えられています。人の営みと歩んだ歴史が、無数の呼び名を育てました。


同じ花が「不吉」と「神聖」に分かれる不思議

彼岸花のいちばん面白いところは、正反対の印象を同時に持っている点です。「怖い花」と言う人もいれば、「ありがたい花」と受け止める人もいます。同じ花なのに、なぜこうも分かれるのでしょうか。

その答えも、これまで見てきた名前と背景の中にあります。両方の側面を整理してみましょう。

「不吉」というイメージの出どころ

怖いイメージは、いくつかの要素が重なって生まれています。墓地に咲くこと、毒を持つこと、そして死を連想させる別名の数々です。

死人花や幽霊花といった呼び名が、その印象を強めてきました。花が葉を伴わず、茎だけで咲く独特の姿も、どこか非日常的に映ります。これらが「縁起が悪い」という見方につながりました。

「神聖・吉兆」という側面

一方で、彼岸花には神聖な側面もあります。仏教における曼珠沙華は、天界に咲く吉兆の花でした。

お彼岸に咲くことから、先祖を偲び供養する花としても大切にされてきました。同じ花が、名前と文脈しだいで不吉にも神聖にもなる。この二面性こそ、彼岸花という花の奥深さです。


毒はある?「家に植えてはいけない」は本当か

彼岸花について、「毒があるから危険」「家に植えてはいけない」という話を聞いたことがあるかもしれません。ここは不安を煽らず、事実と俗説を冷静に分けて確認しておきましょう。

まずは毒性について、正確なところを押さえます。

毒性を正しく知る

彼岸花には、花・茎・葉・球根のすべてに毒があります。特に球根には、リコリンと呼ばれる成分が多く含まれます。

素手で球根を長く触るとかぶれることがあり、誤って口にすると吐き気などを起こす可能性があります。ただし、咲いている花を眺めたり、普通に鑑賞したりする分には問題ありません。過度に恐れる必要はなく、正しく知って扱うことが大切です。

「植えてはいけない」の正体

「家に植えてはいけない」という言い伝えは、毒性と不吉なイメージが結びついて広まった俗説です。植物として栽培できないわけではありません。

実際、園芸品種のリコリスは家庭でも育てられています。小さな子どもやペットが球根を口にしないよう気をつければ、庭で楽しむことは十分可能です。迷信と事実を分けて考えると、必要以上に身構えずに済みます。


彼岸花の花言葉

これだけ多面的な花には、花言葉もまた印象的なものがそろっています。赤い花のイメージから生まれたものや、独特の生態にちなんだものがあります。

代表的な花言葉を紹介します。花言葉には諸説あるため、目安として捉えてください。

  • 情熱
  • 独立
  • 再会
  • あきらめ
  • 悲しい思い出
  • 思うはあなた一人

「再会」や「また会う日を楽しみに」といった花言葉は、花と葉が出会えない生態と重ねて語られることがあります。切なさと情熱が同居するのも、彼岸花らしい魅力です。

名前の数だけ彼岸花には物語がある

彼岸花・曼珠沙華・リコリスは、同じ赤い花を指す名前です。彼岸花は正式な和名、曼珠沙華は仏教由来の別名、リコリスは学名であり園芸の呼び名という3つの軸で整理できます。彼岸花はリコリス属の一種で、白や黄の仲間もいます。

1000を超えるとも言われる別名は、見た目・生態・毒・死のイメージといった由来で分けられます。田の畦や墓地という生活圏のすぐそばに咲き、人が植え広げてきたからこそ、これほど多くの呼び名が生まれました。同じ花が不吉にも神聖にも見えるのは、名前と背景が織りなす二面性ゆえです。

名前の物語を知ったうえで眺める彼岸花は、きっとこれまでと違って見えるはずです。この秋は、赤いじゅうたんに会いに出かけてみてください。


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